1P
SDF-4 「モルデカイ」
SDF「モルデカイ」艦内の通路をスーツ着用、メットを左手に抱え振り向くBIBI

2P
 ・・・広大な宇宙・・・

およそアンドロメダ星雲より6万光年離れた・・・

・・・Warrant BIBI-AVA(ビビ・アヴァ准尉)、

ガウオークモードのSRF-71J「イコノクラスト」に搭乗・・・
 

・・・ヘルメットを右脇にSDF「モルデカイ」を去る・・・
 

 



4P
(コクピットの音声記録スイッチをクリック)

・・・ビビのログ・・・
私がSDFーモルデカイを去って既に3日が過ぎていました・・・

・・・私はもうここにはいません。
故郷である地球に帰るつもりです・・・

・・・多くの私のおともだちのように、
私はモルデカイでは産まれていませんでした。

だから私はここを去るこにはまったく悔いも戸惑いもないです・・・

(裸のまま、手で胸を交わして隠し、カプセルで検査を受けるビビ)

・・・私は敗血症でした・・・
それは直ちに死ぬようなものではありませんでした・・・

・・・でもそれはこれからもXALON-PROCESSを使って
私の若さを維持することも決して出来ないということを意味しました・・・

(老婆となった彼女を鼻をつまみながら通り過ぎるカップルの図)

・・・これからの40年、皆が若いまま生きていけるのに、
私はモルデカイで唯一の老婆になるでしょう。
私はそのことに耐えられませんでした・・・
 

・・・この船の人全てが、そして友人達がが生き続ける中、
誰がたった独りで歳を取り、死ぬことを望むでしょうか?・・・

P7 


デモント:「これはここでの想い出として持っていって・・・」
 

BIBI:「デモント・・・・」
 

デモント:

「これはね・・・私がXALON-PROCESSの試験に失敗した時に・・・
20歳のころのもの。
私の周りの人たちが私よりずっと長く寿命を、
よりよい命を生き永らえることが怖くて、ここを去ろうと考えた時に問いかけた・・・
そのときのもの」(ビビ、タロットボックスを持って涙ぐむ)

BIBI:
 「そうだわ、このイコノクラストは私を地球に降ろした後に、
SDFモルデカイに戻るよう、プログラム済みだっけ!」
 

BIBI:
「AI・・・イコノクラストに絶対命令!私は戻ることにします!」

・・・そうしてこんな馬鹿な事をしたことを彼らにあやまるわ!・・・

BIBI:「イコノクラスト?予定変更!」

(AIのボイスガイドのスイッチを入れる)」

AI(イコノクラスト): 「しばらくお持ちください」

BIBI:「プレ・プログラムされた現在位置からのモルデカイまでの航路を表示なさい!」
 

AI(イコノクラスト):「拒否します。不適切な時間指定です」
 

BIBI: 「・・・」
 

AI:(イコノクラスト):
「♪インプット要求に28分を加えてっと♪」
 

 

P6 


(警告音)

BIBI:
「何が起きたの、どうしたというの?」

Al(イコノクラスト)

「まっすぐ地球の故郷のホーベル・タウンに向かっているんじゃないの?
情報をよこして!」

(警告音続く)

「あああああ!これじゃあ頭がどうにかなってしまうわ!」
 
 
 

(回想)
 

 ・・・彼らは私に接近してきた・・・
 ・・・夫妻は・・・

 ・・・14歳のこそ泥や売春をするしかない少女以外の何者でもなかった・・・
 ・・・私を受け入れ養育した・・・
 
 
 
 

BIBI: 
「だから今私を見て!
何千光年もの巨大ガス星雲を隔てた航法だって計算できるんだから・・・」
 

(指折りするビビ・・・)
BIBI:
 「ええと・・・あまりやっかいではないけど・・・」
 

<再び回想>

デモント:「親愛なるビビ・・行ってしまうのね・・・
       けれど本当にここを出て行ってしまうの?」
 



P8 


BIBI:
 「もう!28分も待ってられないわ・・・
私は今すぐ戻りたいの!
フォールドシステムを作動させなさい、これは命令よ!」

A:(イコノクラスト):
「警告!12%の確率でドライブが失敗に終わる可能性があります」
 

BIBI:
「黙ってとっととフォールドなさい!
私がするべきことはわかっているわ!」

 「私は航宙士のうえに、センサーオペレータなのよ!
黙ってついてきて!  ジャンプなさい!」
 

AI(イコノクラスト):
「フォールド開始します・・・」
 
 

BIBI:
「私って今日は冴えてる!全てが順調に行くわ・・・」

 


P9 


(機体の振動!タロットカードが散らばる)

BIBI: 「何が起きたの?」

AI(イコノクラスト):

「警告!フォールドエラーです!パイロットは事前に注意を払いませんでした。
警告!メモリーエラー!航法先アドレスをロストしました・・・」
 

BIBI :「ロスト!ロストなの?」

AI(イコノクラスト):

「もしフォールドが不活性でないのなら・・・機体が偏向したのでしょう。
このユニットはパイロットの強い命令には従うように出来ています。
私は、今回確かに必要な危険について貴女にアドバイスしました」

BIBI:

「ああ!賢いコンピューターの貴方とこんなとこで宇宙の迷子だわ!」
「まさかデ・フォールドしたとたん、貴方と一緒にオダブツなんて!」

AI(イコノクラスト):

「10秒でフォールドを抜けます。
このユニットは直ちにクラッシュ・マニユアル・プロトコル(不時着時操作機械手順)と、この機体のコントロールに従います」

Al:(イコノクラスト):「パイロットは直ちに衝撃による血流停滞に備えて防御姿勢をとってください」

ビビ:「待って!そんなに!!」

 

P10 (ツ・ゼンチャ・・・ゼントラーディの難民の世界・・・)
P11 (落下する機体・・・減速噴射・・・イナーシャコントロールによる衝撃緩和・・・地表激突)
P12(SRF-71Jのイコノクラストのガウオークの機体を覗き込むゼントラーディ敗残兵A・・「ウーム」)

P13
ゼントラ兵A、、コクピットを覗き込みながら)
「ハァー!?」
「カルチャ!」

ゼントラ兵B「カルチャ!」
ゼントラ兵C「カルチャ!」

<ビビの髪に落ちるタロットカード「愚者」

P14 


BIBI:
 「あれ!オートパイロットでクラッシュモードにしたんじゃなかったの?」

(作者注:彼女は手動モードで設定を上書きしていたのかもしれない)
 

BIBI:
「重力・・・??あなた何をしたの!
あなたパイロットの保護の為に私を眠らせるっていったじゃない!」

A:(イコノクラスト):「肯定的です」

P15 


BIBI:
 「だからぁ・・・私達が飛び出してから、どの位経ったって言うの?」

AI(イコノクラスト)」: 「368日と2時間34分です」

BIBI:
 「ヒュー!」

BIBI:
「何ですって!」

A:(イコノクラスト): 「(控え目に小さい声で)368日と2時間34分です・・・」

(ビビ、しばし無言)

Al(イコノクラスト)
「血流停止フィールドプログラムのオペレーションコマンドは断片化し粉々になりました・・・
ですから解除に368日と2時間そして・・・・」

ビビ:
 「わかったわ!わかった!だまりなさい!だまりなさい!だまれってば!」

(コンソールを叩く)

BIBI:
 「ひどいこと!メチャクチャだわ!のろうわよ!」


P16
BIBI:

「私はちょっと出て歩いて来るわ」

「どれくらい前に私達がこの岩をから滑り落ちたのかしら? ここからモルデカイに私達は戻れるの?」

Al(イコノクラスト): 「歩かれるのですか?感心できませんね。28分程度ならよろしいでしょう、そしたらもどってきてください。はい!」
 

BIBI:
「黙りなさい!必ず28分で戻って来るから、いいでしょう!」
(ああ・・・)

「あ!デモントのタロットカードがバラバラ!」
「私が戻ってくるまでにスタックを修復できる?」

A:(イコノクラスト): 「このユニットはパイロットが操縦席から去ることを思いとどまらせる時間が欲しいです」
 

BIBI:「黙ってて!」

                                            

P17


BIBI:「私達はどこにいるの?」

Al(イコノクラスト):
「どこかの星系の、見渡す限り草原に覆われた世界のようです。
おそらくアンドロメダ星雲中心部から5000光年は外側にあります」

BIBI:「私達がクラッシュした時に、全てここにあったものかしら?・・いいえ、誰が手形を押したのかしら?」

AI(イコノクラスト):「誰かいるようです」


P18 


BIBI:
「キャーーーーー」

「ゼントラーディ・・・・・
ゼントラーディだわ!」


P19 


恭順を示しすゼントラーディ男女の群れ。
その先にはマイクロン化した同族の夫婦らしき姿がある

BIBI:「・・・・・・」
 

BIBI:「ええ?・・・あは!私は本当にだめだってば!あ?!」

 


P20


赤ん坊をビビに差し出す女

BIBI:「あ・・・」

(赤ん坊を受け取るビビ)

 


P21 


(ビビの機体内を覗き込み、
タロットの箱を取り出すその女の夫らしき男、巨人達にタロットを掲げる!)

カードのハートの6「恋人達」(赤ん坊をビビに差し出す女)

ゼントラーディ達歓喜の声「おおー!(ああー!)」

ビビ:
「(つぶやくように)私をからかってるの?あれ?」
 



P22 


BIBI: 
「けど、この子はあなた達の子供でしょ?」

(振り返る女、子の頬にキスをして子供を託すかのように)

女:
「アレグラ・・・」

(子の名前と思われる・・涙ぐむ女、去り行く夫妻と巨人達)

BIBI:
 「だって・・・だって・・・」

(泣く子供)
 


P23 


・・・下士官ビビ・アバのログ・・・

 「ふう・・・」

・・・私はモルデカイに乗ることで、

与えられた生をただ生きることの意味、

そして思春期を無駄に過ごすことについて考えてた・・・ 
 

(ビビ、残った1枚のタロットカードを見つける・・・)
 

「あ!これ・・・」
 
 
 
 
 

 ・・・私はタロットの読解を学ばなかったことをちょっと後悔した・・・

 ・・ タロットカードの 「17」 ・・・
 
 

  「The star (星々)」


- 終わり -

3P
BIBI:
 「・・・(タメイキ)やっちゃった・・・・
本当に出てきちゃったのね・・・(LOGスイッチを開ける)」

「下士官、ビビ・アバのログ・・・ノイズが入ってる・・・
あ、私はもう士官なんかじゃなかったんだっけ・・・」
P5
「私は最初の場所である地球を去ろうなんて思ってもみなかった

・・私は・・・・」


「私はひとりぼっち・・・・」